第2回〈体験ツール研究会〉の報告

日時◆2008年5月24日(土曜日)
  ◆13時30分〜
会場◆宇都宮美術館 会議室/展示室

参加◆大学関係者  1名
  ◆高等学校教員 1名
  ◆中学校教員  1名
  ◆美術館学芸員 3名
  ◆合計     6名

 2008(平成20)年5月24日、第2回〈体験ツール研究会〉が、宇都宮美術館を会場に開催されました。
 今回は、宇都宮美術館から「あーとネット・とちぎ」へ依頼があり、その内容について話し合ったのち、研究会で作成するツールの具体的な問題について協議しました。

【今回の議題】

■宇都宮美術館から「あーとネット・とちぎ」へのお願い

●平成20年度の文化庁芸術拠点形成事業に採択された「Re+Collectionsプロジェクト」において、作品鑑賞のための教材開発と、鑑賞ワークショップ・ファシリテーターをお願いしたい。

●プロジェクトの概要は以下の通り。

……宇都宮市内の小・中学校が所蔵する美術工芸等の作品を、宇都宮美術館の学芸員が中心となって、協力スタッフ(学生と社会人で構成)とともに発掘・調査する。

……調査した作品をデータベース化する。

……調査した作品から約30点を選び、希望校1校を会場として展覧会を開催する。

……調査した作品をもとに作品を鑑賞するための教材を開発し、展覧会の会場において、ワークショップを行なう。

……データベースと教材は、CD−ROMにして、市内の小・中学校に配布する。

●「あーとネット・とちぎ」の皆さんには、鑑賞を助けるための教材の企画開発と、鑑賞ワークショップのファシリテーターをお願いしたい。

●鑑賞を助ける教材は、PDFファイルなどにデータ化できるものが望ましい。

●「投げかけキャプション」「わくわくツール」などを想定している。

●鑑賞を助ける教材は、11月から1月にかけて企画し、2月に試作品を完成させる。3月には、完成番を作り上げる。

●また、展覧会の会場で、上記の教材を用いたワークショップを、一般の人と教員向けに開催するので、その講師役をお願いしたい。

●ワークショップの期日は、2009年の2月11日(日)頃を予定している。

◆参加者からの助言として

●県立学校の所蔵作品で、同様の事例があった。

●日光市でも、公共施設や市立学校の所蔵作品の調査を行なっており、やはり、今年度の展覧会で一部を紹介する予定だ。

●大田原市では、市が所蔵する彫刻作品を学校に置いている。

■「体験ツール」の参考として

●チャック・マーフィーによる、しかけ絵本『びっくりいろあそび』(大日本絵画)が、「触れるツール」や「わくわく(つかみ)ツール」の参考になるのではないか。

◆現物が提示され、検分を行なう。

●シンプルな色面から始まるデザインが良い。

●ポップアップのしかけを作るのは、「平面」から「立体」を起こす作業とは、また少し違って、「見え方」を考えさせることになる。

●ポップアップの作り方のガイドブックもある。

■「触れるツール」について

●「触れるツール」の当初のねらいは、平面上のイメージと実際の立体との関係性を把握できる能力を養うことにあった。

●この能力は、美術だけでなく、さまざまな分野で必要とされる、人間の本質的な能力の一つではないか。

●数学の分野でも、東海大学の秋山仁氏が立体教具を用いて、話題になっている。

●実際にどのようなアイデアがあるかというと非常にむずかしいが、これまでの議論を参考に、これからも、どうにか検討していきたい。

●「触れるツール」では、立体を把握するためのものとは別に、素材を理解するという目的のものもある。

●その場合、まずは、日本画と油彩画の大きな違いなど、基本的なところを押さえたい。

●「触れるツール」を考えるならば、純粋な素材としてのテクスチャーと、作家の意図が介在したマチエールとの違いをしっかり踏まえておかなければいけないのではないか。

●実作者の立場からは、作家の意図的なマチエール(絵肌)を理解してもらいたい。

●作家は、いろいろとマチエールについて工夫している。

●しかし、純粋に絵を見る側からすると、そのマチエールを理解することが、どこまで、作品そのものへの理解につながるかという点で議論が必要だろう。

●当面のねらいとしては、絵を見るときに素材へも意識を向けてもらうことでよいのではないか。

●多くの人は、日本画の顔料が、どんな感じで紙に定着しているかがわからない。専門家でも、日本画の画面に触れる機会は滅多にないはずだ。

●絹に薄く描かれた日本画と紙に厚く塗られた日本画や、細密に描かれてニスで滑らかに画面を仕上げられた油彩画と荒い筆触を生かした油彩画などの違いを、触覚的に理解できれば、それだけでおもしろいのではないか。

●マチエールの違いを理解するためにも、まずは、テクスチャーの違いを知っていた方がよいだろう。

■「あーとネット・とちぎ」ウェブサイト上のフリー素材集について

●ウェブサイトに掲載している[使える言の葉集]の言葉を、対象とする学齢で分類すると、より使いやすくなるのではないか。

●その他の素材として、これからの若手イラストレーターに、ワークシートにそのまま使用できるようなイラストを描いてもらって、ウェブサイトに掲載できないだろうか。協力してくれるイラストレーターには、準パートナー的な扱いで、自らの広告バナーを無料で出してもらうようにすれば、希望者はいると思われる。

●ウェブサイトにある「言葉」と「イラスト」だけで、簡単なワークシートが作成できるようなると、「あーとネット・とちぎ」のウェブサイトの実用性は大きく高まる。

●現在、有料で広告バナーを出してもらっているパートナー企業にも、クレジットだけは表記した上で自由に使用してもらえば、これから売り出そうとするイラストレーターにもメリットがあるのではないか。

●その他、写真なども含めて「使える素材集」を増やしていくことを役員会でも検討してもらう。

■総会について

●前回の研究会で提案のあった、総会に合わせてマイケル・パーソンズさんを囲む会を開催する件について、計画を進めたい。

●8月3日(日)に総会を開催することにできれば先方の都合にも適う。

●会場は、宇都宮美術館さんにお願いしたい。

●事務局として、通訳の方への謝金などについて検討する。


■次回の研究会

◆次回は、6月14日(土)に栃木県立美術館を会場とし、役員会と懇親会に先だって開催する。カンヴァスや絵具などの素材を持ち寄り、実際にどのようなツールが作成できるか試しながら、素材について考えてみたい。研究会でも用意するが、可能であれば、各自が手持ちの素材を持参することとする。