第1回〈体験ツール研究会〉の報告

日時◆2008年4月27日(土曜日)
  ◆13時30分〜
会場◆栃木県立美術館 普及分館ラウンジ

参加◆大学関係者  1名
  ◆高等学校教員 1名
  ◆小学校教員  1名
  ◆美術館学芸員 4名
  ◆合計     7名

 2008(平成20)年4月27日、第1回〈体験ツール研究会〉が栃木県立美術館の普及分館ラウンジを会場に開催されました。
 今回は、前年度から引き継いだ課題として、「投げかけキャプション」+絵葉書の試作品についてのモニタリング調査の報告が行なわれ、これからの研究の方向性などについて討議しました。

【今回の議題】

■「投げかけキャプション」+絵葉書の試作品についてのモニタリング調査の報告1

◆御幸小学校では、図工室の目立つ場所に掲示した。

●中学年と高学年の児童の食いつきがよかった。

●「これはなに?」と興味を持って見たり、言葉に注目していた。

●しかし、教師がいないと、内容にまで踏み込むのはむずかしい。

●掲示してすぐのときのインパクトは強いが、だんだん見慣れてしまい、次第に教室と同化してしまう。

●対話型鑑賞につなぐきっかけとしては有効ではないか。

●小学生には具象画のほうがよいかもしれない。

■「投げかけキャプション」+絵葉書の試作品についてのモニタリング調査の報告2

◆小杉放菴記念日光美術館で開催した〈出会いの美術〉展に来館した中学生に、栃木県立美術館の島氏が作成した、アンケート形式のワークシートに記入してもらった。

◆一枚の紙に、12の質問が記されたワークシートを配布し、好きな絵を選んだ上で、その絵に対する質問も選び、答えてもらう方法で行なわれた。

◆どのような質問が選ばれたかは、別紙の集計を参照のこと。

●中学生になると、抽象画にも反応しているようだった。

モニタリング調査に使用した「投げかけキャプション」+絵葉書の試作品

■今年度の研究会の方向性について

●知識を与えるためだけではなく、「実感」や「体験」ができるツールができればよいと思う。

●昨年度までの議論も、そういう方向性にまとまってきていたのではないか。

●そのような方向性を、今年度の研究会の名称にも反映させたい。

●そのまま、「実感ツール研究会」、「体験ツール研究会」などとしてもよいだろうが、「わくわくツール」という名称もおもしろいかも……。

●やはり、「体験ツール」という名称が、いちばん、わかりやすく、かつ、実状にも近いのではないか。

◆今年度の定期研究会の名称は、「体験ツール研究会」と決まる。

◆昨年度から行なってきた議論の延長線上に、「体験」という言葉を意識して、ツールを考える。

●以前から検討してきた、「触れるツール」なども、改めて「体験」という位置づけから捉え直してみてはどうか。

●「触る」と言った場合は、画面(テクスチャー)を触ることと、素材(支持体)を触ることとの、2つが考えられる。

●そのどちらも、体験できた方がよい。

●そのためには、やはり、以前から話題になっていた、六面体に、それぞれ別の素材を貼付したツールを検討してはどうか。

●主に木炭デッサンのモティーフにする用途なのであろうが、画材として、六面体(立方体)を自作できるキットが市販されていた。これを利用すれば、別に、いくつかの素材を用意するだけで、「触れるキット」ができる。

●実作者の立場から言えば、素材をただ触るだけのことにどれだけの意味があるのか、疑問に思う部分もある。とくに、素材ごとの境界をどのように処理するかは重要だ。

●まず、子どもたちに絵画鑑賞への関心を持ってもらうため、導入に役立つ、ゲーム性のある「わくわくツール」や「つかみツール」というべきものも継続して考えていきたい。

◆今年度も、美術館と学校との連携については、引き続き取り組んでいく。

●今年度は総会が開催されるが、それに合わせて、なにか美術鑑賞についての催しを考えなければならない。

●8月であれば、「InSEA 国際美術教育学会世界大会2008in大阪」に出席するために来日されるマイケル・パーソンズ博士(オハイオ州立大学名誉教授・研究分野は美術における理解や評価、認知発達、統合カリキュラムなど、多岐にわたる)をゲストに迎えた会を実施することができる。5月末か6月初めに、総会準備のための役員会を開かなければならないが、そこで検討してもらいたい。


■次回の研究会

◆次回は、5月24日(土)に宇都宮美術館を会場に開催し、今回の研究会で提起された問題を、さらに深めて討議する。