第10回〈鑑賞ツール研究会〉の報告

日時◆2008年1月24日(木曜日)
  ◆18時30分〜
会場◆栃木県立美術館 普及分館ラウンジ

参加◆大学関係者  1名
  ◆中学校教員  1名
  ◆小学校教員  1名
  ◆美術館学芸員 3名
  ◆合計     6名

 2008(平成20)年1月24日、第10回〈鑑賞ツール研究会〉が栃木県立美術館の普及分館ラウンジを会場に開催されました。
 最初に、東京国立近代美術館による教材セットの検分を行ない、引き続き、前回の研究会で提案された「投げかけキャプション」と、今回、新たなアイデアで作成された2つの「投げかけキャプション」とを、併せて比較・検討しました。

【今回の議題】

■東京国立近代美術館の教材セットについて

●5分授業用と45分授業用がある。

●授業の例としては、アメリカのヴィジュアル・シンキング法に比べ、観察や問いかけが細かいようだ。

■「投げかけキャプション」+絵葉書の試作品A〜Cについて

◆試作品A(小杉放菴記念日光美術館の田中氏の提案)について

「投げかけキャプション」付の額縁ツール・キット試作品A

「投げかけキャプション」付の額縁ツール・キット試作品A

●とてもシンプルで、掲示用にはぴったりだ。

●多くの「言葉」は入れられないが、小学校にはちょうどよいかも知れない。

●たしかに、製作は簡単そうだ。実際に安く製作できれば、多くの学校に配布することが可能になる。

◆試作品B(栃木県立美術館の島氏の提案)について

「投げかけキャプション」付の額縁ツール・キット試作品B

「投げかけキャプション」付の額縁ツール・キット試作品B

●「言葉」も入れ替えることができるので、汎用性が高い。

●「投げかけ」の質問と答えのテンプレートが用意されたことで、子どもたちに、その理由を考えさせることができる。

●4つの透明ポケットがあり、いろいろな「言葉」を組み合わせて使うことができることから、より高度な鑑賞が可能になるかもしれない。

●中学生くらいのレヴェルの鑑賞にふさわしいのではないか。

●材料費を抑える努力も見られる。

◆試作品C(宇都宮大学の石崎氏の提案)について

「投げかけキャプション」付の額縁ツール・キット試作品C

「投げかけキャプション」付の額縁ツール・キット試作品C

「投げかけキャプション」付の額縁ツール・キット試作品C

「投げかけキャプション」付の額縁ツール・キット試作品C

●かなりツールらしい仕上がりになっている。

●タブを引き出すと、質問が隠れている発想はオシャレで、遊び心をくすぐられる。

●ただし、掲示用としては完成度が高すぎるかもしれない。制作費が高くつきそう。

●実際の授業で使えればよいが、残念ながら、一学級の生徒数分を作る予算は無理だ。

●このツールは、掲示用ではなく、授業用として有効だろう。

●教師が子どもの発言を分析する際に使うことができるのではないか。

●左右のタブを引き出すという、このツールの機能を、コンピュータ上で再現してWebなどで公開することができれば制作費の問題は解決する。

◆試作品の全体として

●これらの試作品は、A → B → C という順番で、子どもの発達段階に合わせて使用できるのではないか。

●この3つを、発展的にステップアップさせて使うと効果的な気がする。

●その場合、BとCの間の段階をつなぐツールがあった方がよい。

●〈あーとネット・とちぎ〉と学校の現状を考えると、やはり、低予算でできることは重要だろう。

●そろそろ、これらの試作品を実際に子どもたちに試してみてもよい時期ではないか。

■「投げかけキャプション」+絵葉書の活用方法について

●どこかの現場で「投げかけキャプション」の試験運用ができればよいが……。

●試作品Aのタイプであれば、すぐに複数個を製作し、モニタリングすることができる。

……この日、研究会に参加していた、宇都宮市内の小学校教員のクラスで、試してもらうことになった。

……次回の研究会までに、試作品Aのタイプの縦型と横型を、それぞれ製作してくる。

●小杉放菴記念日光美術館で開催される、〈出会いの美術〉展に来館する子どもたちに、試作品Bを使用することを前提にして、好きな作品と「投げかけキャプション」の言葉を選んでもらってはどうだろうか?

●口頭で好きな問いに答えてもらうことは可能だろう。

●それによって、子どもが答えやすい問いを析出できるのではないか。

……すぐに、「投げかけ」の言葉をまとめたプリントを用意する。


■次回の研究会

◆「投げかけキャプション」付の額縁ツール・キットの、新たな別のアイデアがあれば、引き続き、その試作品を提示してもらう。また、試作品Aと試作品Bについての、モニタリングの準備を完了する。