第4回〈鑑賞ツール研究会〉の報告
日時◆2007年7月29日(日曜日)
◆15時00分〜
会場◆小杉放菴記念日光美術館 会議室
参加◆中学校教員 1名
◆美術館学芸員 4名
◆合計 5名
2007(平成19)年7月29日、第4回〈鑑賞ツール研究会〉が小杉放菴記念日光美術館の会議室を会場に開催されました。
「言葉のツール」としての対話型鑑賞について、これまで3回にわたり、理念と方法を学びながら具体的に実践したことを踏まえ、今回は、「言葉のツール」のまとめを行ないました。
【今回の議題】
■展覧会の鑑賞
◆「あーと・ネットとちぎ」のプロジェクトの一つである〈対話型鑑賞実践研究会〉が対象とする〈大正ノスタルジー "小林かいち"と絵葉書の世界〉展を鑑賞した。
■「言葉のツール」についてのまとめと提言
◆宇都宮市立一条中学校の青木孝浩先生がまとめられた〈対話型鑑賞法における「言葉のツール」考察レポート〉(以下、「青木レポート」)と、対話型鑑賞法による授業の実践資料をもとに討議をした。
◆「あーとネット・とちぎ」の平成19年度事業の一つとして、7月から8月にかけて小杉放菴記念日光美術館を会場に開催される〈対話型鑑賞実践研究会〉は、「鑑賞ツール研究会」で討議した内容も踏まえた実践であるため、〈対話型鑑賞実践研究会〉についても、小杉放菴記念日光美術館からの説明が行なわれた。
●「言葉のツール」としての対話型鑑賞は、その理念や方法を学ぶだけではなく、実践を行ない、経験を積み重ねることが、有効性を考える上で必要となるのではないか。
●対話型鑑賞を究めていくには、これからも、学校や美術館におけるトークの実践例を、「あーとネット・とちぎ」のWebサイトに掲載し、それを検討し続けていくことが有効なのではないか。
●対話型鑑賞は、結局、トーカーのスキルにつきるのではないか。
●対話型鑑賞は、子どもたちに、作品を一緒に見て話し合うおもしろさを伝えられれば、それでよいのではないか。
●美術館では、子どもたちに作品をおもしろいと感じてもらえたら、その鑑賞は成功したものだと捉えている。また、それだけ、子どもたちの関心を得るのは、むずかしいということである。
●学校でも、義務教育のレヴェルでは、一枚の絵を見ておもしろいと感じてもらえたら、それでもよいのではないだろうか。
●作品から感じたことを言語化するためには、作品をよく見ることが必要になる。そこに対話型鑑賞を行なうことの意義もあるのかもしれない。
●「言葉のツール」として対話型鑑賞があるが、「言葉を使わないツール」というものもあるのではないか。
●言葉を使わないことに、どういう意味があるか。
●美術作品の、言葉に還元できない部分を理解することも重要ではないか。
●やはり、対話型鑑賞では、「いっしょに見る・話す楽しみ」を子どもに伝えることが目標となる。
■「言葉のツール」からの展開
●「青木レポート」の中に、対話型鑑賞でトーカーが用いる「投げかけ」の言葉を、そのままキャプションにして、学校内に展示されている名画の複製に付ける方法が紹介されていた。このような「投げかけキャプション」を、教材キット(=鑑賞ツール)として製作することも考えてよいのではないか。
●対話型鑑賞を行ないやすくするために、普段からの取り組みとして、学校に飾ってある複製画に「投げかけ」の言葉を記したキャプションを付けてみたところ、たいへん反応がよかった。たしかに、キット化して鑑賞ツールとする可能性があるかもしれない。
●どのような作品にも共通して対応できる、汎用性の高い「投げかけキャプション」が作成できれば非常に役立つ。
●子どもたちの発達段階を考慮し、その鑑賞能力に合わせた「投げかけキャプション」が作成できれば、ステップ・アップ・キットとして、学校で使用するのに効果的だ。
●鑑賞ツールでスターター・キットに加えてステップ・アップ・キットもできれば、研究会の成果として、学校などにもアピールしやすいのではないか。
●栃木県内にある、いろいろな美術館の所蔵作品に対して「投げかけキャプション」を製作してもよいのではないか。
■次回の研究会
◆次回からは、「触れるツール」として実際に使える教材キット(鑑賞ツール)の製作について検討するので、各自がそれぞれのアイデアを考えてくる。
◆次回の研究会までには、10回にわたる〈対話型鑑賞実践研究会〉の鑑賞教室が終了しているので、内容を総括して反省を行なう会合も併せて開催したい。