第7回ワークシート研究会の報告
日時◆2007年2月1日(木曜日)
◆18時00分〜19時30分
会場◆宇都宮大学 教育学部B棟図画工作室
2007(平成19)年2月1日、第7回ワークシート研究会が宇都宮大学で、教育学部B棟図画工作室を会場にして開催され、大学関係者1名、大学院生10名、中学校関係者1名、小学校関係者2名、美術館関係者4名、計18名の参加がありました。
今回は、宇都宮大学の大学院生が、栃木県内の美術館の所蔵作品を対象に作成してきたワークシートを発表し、その後、参加者とともに討論を行いました。
【今回の議題1】
■課題の実例◆前半
前半では、次のようなワークシートが発表された。
1.柄澤齊《肖像IV アルチュール・ランボー》(栃木県立美術館)
……じっくり見ることに専念させるワークシート
2.川上澄生《北風と太陽の物語》(鹿沼市立川上澄生美術館)
……作品の対比に注目させて理解を深めていくワークシート
3.伊藤若冲《菜蟲譜》(佐野市立吉澤記念美術館)
……見立てのおもしろさに注目させるワークシート
4.銘古満休伯《とんぼ螺鈿蒔絵印籠》(うるし博物館)
……絵本仕掛けで楽しく理解を深めるワークシート
5.伊賀高史《ひと》(もうひとつの美術館)
……素材に注目して作者の想いを考えさせるワークシート
◆前半の討論でのポイント
01 オリジナルの作品をいかにじっくりと見させるか
……ワークシートでの作業が多くなると肝心の作品をじっくりと見る機会を減らす場合もあり、そのジレンマをどのように解決するか、意見が交わされた。
02 作品研究をいかにワークシートに反映できるか
……ワークシートの内容の質を深めていくため、例えば、大学院の修士論文などでの研究成果をわかりやすくワークシートに生かす工夫などが期待される。
03 シート形式に限定せず、絵本のようなツールにすると親しみやすい
……美術館でのワークシートが、いろいろなアイデアで親しみやすいツールになると、学校での活用が期待され、そのニーズはかなりあるという感触だった。
【今回の議題2】
■課題の実例◆後半
後半では、宇都宮美術館の所蔵作品を対象とした、次のような4つのワークシートが発表された。
1.マグリット《大家族》
……絵はがきにして鑑賞の想いを広げていくワークシート
2.リートフェルトの椅子
……形と色の造形要素について考えさせるワークシート
3.佐藤時啓《Utsunomiya #4 2001》
……ピンホールカメラの制作に展開させるワークシート
4.シャガール《青い恋人たち》
……作品の立体造形を楽しめるワークシート
- 資料2 リートフェルトの椅子
◆後半の討論でのポイント
01 まだ、美術館に行ったことのない児童生徒をいかに惹きつけるか
……宇都宮市外の中学生のアンケートによって、《大家族》の実作品を見たことのある生徒はほとんどいない状況が示され、実作品を見るための動機付けとしてのワークシートの可能性について意見交換した。
02 工作的な表現に展開するツールのおもしろさ
……ピンホールカメラや立体絵の工作は、ワークショップでも活用できるし、お土産的な魅力もあるということで、参加者には関心が高かった。その作成にあたっては、著作権の問題に注意しなければならないが、オリジナルのものを描き起こすなどする解決策も提案された。
03 ワークシートの素材の効果
……ワークシートに使う紙の質や配色の効果を工夫することによって、その魅力はかなり異なってくることが指摘された。限られた費用の中で行なわれる、さまざまな工夫を共有できるようにすることも、この研究会の役割ではないかと期待が述べられた。
以上、9つのワークシートについて熱心に意見交換された。
■次回までの課題
今後は、ワークシートを、もう少し広く捉えて、ワークツールのようなものを発展的に研究していこうという方向性が確認された。
※次回の研究会については、後日、ホームページに掲載します。