第10回〈体験ツール研究会〉の報告
日時◆2009年3月14日(土曜日)
◆13時00分〜16時00分
会場◆うつのみや表参道スクエア5階 市民ギャラリーおよび市民プラザ会議室
参加◆高等学校教員 1名(ファシリテーター)
◆中学校教員 2名
◆大学研究者 1名
◆美術館学芸員 3名(うち1名はファシリテーター)
◆中学生 6名
◆合計 13名
2009(平成21)年3月14日、第10回〈体験ツール研究会〉が開催されました。
今回は、うつのみや表参道スクエア5階 市民ギャラリーおよび市民プラザ会議室を会場に、宇都宮美術館の「Re+Collections小中学生による学校所蔵品再発見プロジェクト」への協力事業として実施され、同プロジェクト展覧会会場での作品鑑賞ワークショップとディスカッションを担当しました。
【今回の議題】
■あーとネット・とちぎpresents
作品鑑賞ワークショップ「覚醒セヨ学校美術」の実施
◆事前には、「鑑賞教育のための指導者研修」を予定していたが、年度末の3月に実施ということもあり、学校教員の参加が少なかったことと、ワークショップに中学生の参加が見込まれていたことなどから、これまでに、「あーとネット・とちぎ」の定期研究会で製作してきた鑑賞ツールを実際に中学生に使用してもらって作品鑑賞につなげ、そこから、今後のツール開発を協議するという内容になった。
■絵画の鑑賞ワークショップ−体験ツールを用いて−
13時00分〜
◆展覧会場の出品作品は、全てが学校の所蔵品であることから、「(自分だったら/寄贈者は)どんな作品を学校に飾りたいと思うか」というテーマを、参加者に考えてもらい、その中から6つの意見を書き出していく。
◆6つの意見をサイコロの目(六面)に割り当てる。
◆サイコロをふって出た番号の意見に該当する「児童生徒を元気づけるような絵」を展示作品から各自で選び、選んだ理由を発表し合う。
◆日本画と油彩画の「山」の描き方を比較して、違いを見つけ出す。
◆体験ツールのサイコロ(べんがらバージョン)に触れてもらい、触覚でも画材の違いを体験する。
◆べんがらの粉、千本膠、液状の膠、アラビアゴム、キャンバス、和紙を見せる。
◆粗さが違う緑青の色面を単眼鏡で観察する。
◆作家は、どのような気持ちで画材を選ぶのか、また、見る方の側は、さまざまな画材によって、どのような違いを感じ取るのかを考えてみようと、参加者に投げかけて終了。
■彫刻の鑑賞ワークショップ「彫刻との出会い方」−ワークシートを用いて−
13時50分〜
◆自分の家や学校に彫刻があるかどうかを問いかける。
◆記憶の中の彫刻は、どんなもので、どんな場所にあったかを問いかける。
◆東京ミッドタウンなど、さまざまな場所の彫刻作品を紹介する。
◆今回の鑑賞活動の対象となる彫刻家・佐伯留守夫の作品が、県内の高校にあることを紹介する、
◆ワークシートを用いて、展示作品をじっくり鑑賞する。
◆3点の展示作品から1点を選び、主題・イメージ、素材、技法について、よく観察し、思いついたことをどんどん書くように促す。
◆ワークシートに書いたことを発表してもらう。
◆佐伯留守夫が用いた素材であるクスの木っ端を丸ノミで削り、木の香りや触感、削った表面の質感を体験してもらう。
◆周囲の環境にとけこみがちな彫刻作品を、もう一度、再確認し、改めて、出会ってみることを提案して終了。
■ディスカッション――絵画と彫刻の鑑賞ワークショップのそれぞれについて
14時40分〜
●サイコロの目に対応させる意見を、鑑賞者から吸い上げる方法が良かった。
●鑑賞についての切り口をファシリテーターが用意する場合は、鑑賞者に合わせたいくつかのステップを設けることもできるのではないか。
●ワークシートでは、鑑賞者から作品についての叙述を、どうやって引き出していくか、言葉掛けがむずかしい。
■ディスカッション――今後の体験ツールの開発について
14時40分〜
●さまざまな素材や技法にも対応できる「ツリー」(立体的な樹形図型)の活用を考えていく。
●小学生などには、具体的な素材・技法を見せるようにし、年齢が上がるのに合わせて、抽象的・汎用的なものへ変えていくのもよいのではないか。
■次回の研究会
◆とりあえず、新年度になってからも、何らかの名目により、希望者は誰でも参加できる定期的な会合を開催することとする。
◆その会合において、これまでの研究会で検討されてきた鑑賞ツールの課題についての研究を深めると同時に、平圧式版画用プレス機の製作などについても、検討と実験を重ねるようにする。